海水魚

【イラ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(うなぎαさん撮影)

イラの語源

いつものように、ネット検索してみました。

「このイラ、漢字で書くと「伊良」なのですが、ときどき「苛魚」と書かれることがあります。これは、生きている個体を触ろうとすると手に噛みつこうとするため、非常にイライラするからだそうです。」 https://tsurinews.jp/192218/ (2023/11/10閲覧)

このページでは地方名についても触れてありましたので、予習もかねて提示しておきます。

「静岡ではケサと呼ばれるが、これは体側に袈裟懸けに黒い帯が入っているから。そしてこの帯模様から「バンド(band)」と呼ぶ地域もあります。 さらに福岡では「ポッポ」と呼ばれています。これは当該地域で昔から「ハト」と呼ばれてきたことに由来するようですが、そもそも「なぜハトなのか」についてはよくわかっていないようです。 徳島県では「テスノゲ」と呼ばれますが、これはアマダイやブダイなど「大型のベラ系の白身魚」全体をテスと呼ぶ文化があり、その中で評価が低いため「テスの下」となったようです。 その他にも長崎の一部地域では「オオガン」と呼ばれており、これは「顔が大きいから」だと言う説があります。」

寄せられた地方名

イラと呼ばれていることが確認できた地域
 神奈川県真鶴町、山口県下関市、高知県、福岡県、長崎県佐世保市、鹿児島県屋久島・徳之島

尊称系
 カンノンダイ(三重県南伊勢町・大紀町)、カンノン(三重県紀北町)、エベッサン(和歌山県)、ミコ・ミコサン(愛媛県宇和島市)、ショウヤ・ショウヤサン(大分県佐伯市)

帯状の模様系
 オケサ(静岡県伊豆)、オビー(山口県北部)、テスバンド(高知県土佐清水市三崎)

その他
 ハトポッポ(島根県、山口県下関市、福岡県、長崎県佐世保市・雲仙市)、テス(三重県紀北町、高知県土佐清水市)、モムシ(和歌山県雑賀崎)、ベンタ・ベンタイ(長崎県対馬市)、ナベタン(長崎県平戸市度島町)、ナベタイ(長崎県長崎市)、ナベタ(長崎県)、オウガン(長崎県雲仙市)、ハンタ(熊本県天草・水俣市、鹿児島県長島町)、サクラダイ(熊本県水俣市・津奈木町)、ヒメダイ(熊本県水俣市)、バト(鹿児島県阿久根市)、石老(台湾)

※「和歌山雑賀崎では「モムシ」です。「藻伏し」転じてと地元では」:鴛海俊也氏からのコメント。

他科他属との不区別・混同
 ブダイ(東京都、島根県)、テンス(高知県、長崎県佐世保市)、イラブチャー(沖縄県石垣島)

※沖縄におけるブダイ・アオブダイ等の方言。

ナベタイ系?

比較的広く分布している地方名としては、「ハトポッポ」や「テス」が挙げられますが、それとは別に語感が共通する一群があるように感じました。ベンタ・ベンタイ(長崎県対馬市)、ナベタン(長崎県平戸市度島町)、ナベタイ(長崎県長崎市)、ナベタ(長崎県)がそれに当たりますが、さらに拡大して考えてみると、ハンタ(熊本県天草・水俣市、鹿児島県長島町)やバト(鹿児島県阿久根市)についても何らかの関連があるかもしれませんが、これは今後の課題とさせていただきます。

他科他属との不区別・混同

「(長崎県雲仙市では)ブダイもイラも オウガンです。」:佐藤厚氏からのコメント。

「(鹿児島県)長島でもハンタといいますが メスです。長島では、ブダイ?みどり色のがオス。と昔から言われていてウニ漁のあと潮が満ちてくるころ矛で突きに行ってました。(つまり、ブダイのメスとイラが混同されていて、どちらも「ハンタ」と呼ばれているということ:筆者補足)」:平澤洋幸氏からのコメント。

「(和歌山県では)イラとテンスはエベッサンですよね😊」:田中圭氏からのコメント。

「高知県民です 知り合いの年配の方は 良く テンスが 釣れた って 言ってますね!」:吉本禎氏からのコメント。

「東京 ブダイ (標準和名ブダイとわけていない) 」:城所竜弥氏からのコメント。

テンスの語源に一石を投じたい

イラと混同される魚の1つに、標準和名「テンス」がいます。イラとテンスはなんとなく似ていますが、イラはベラ科イラ属、テンスはベラ科テンス属と、属が異なります。このテンスについて、語源を検索してみました。

「由来・語源/神奈川県三崎での呼び名。意味は不明。高知県宿毛市での呼び名は「てす」で、三﨑での「てんす」に似ているが、語源はまったくわからない。一次魚名(他の生き物、事物に例えたものではない。その生物に起源を持つ言語)かもしれない。」 https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B9 (2023/11/18閲覧)

「和名の由来は、背中に丸い斑紋があることから「点魚(テンス)」の意味。「ス」は魚を表す語尾。」 https://www.sea-fishes.com/seafishes/tensu.html (2023/11/18閲覧)

「漢字だと「点魚」と表記し、これは背ビレの真下にある黒い斑紋があることが由来していると言われている。」 https://fishai.jp/368 (2023/11/18閲覧)

上記を総合して考えると、神奈川県三崎での呼び名が標準和名に採用され、「点(斑紋)」があるから「点+魚(す)」だということになりますね。しかし、今回の地方名募集では、「テス」という呼び名が高知県のみならず三重県から得られました。同じ黒潮沿岸からこれだけ類似した呼び名が分布しているのですから、やはり無関係とは思いたくないですね。では、「テス」とはどういう意味なのか?

「テスですが、おでこのことを言うと思います。 昔、おでこの大きい子がテスとかデンツなどと からかわれたのを覚えています。(三重県の事例か、筆者補足)」:嶋田 春幸氏からのコメント。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
木下潤一さま、井上正一郎さま、原野 陽一さま、佐藤厚さま、大澤風季さま、平澤洋幸さま、門家重治さま、下津浦 純さま、Tak Takさま、深田吉宜さま、田中圭さま、高平康史さま、澤 昇吾さま、日高 秀一さま、浅利三智也さま、浜口和也さま、嶋田 春幸さま、三吉 泰之さま、福畑 敏光さま、詹松岳さま、井上恵介さま、寺井祐二さま、川崎友和さま、鴛海俊也さま、藤本 拓也さま、吉本禎さま、徳永 正次さま、城所竜弥さま、下原 誠明さま、川口透さま、木村 尚道さま、笠井満英さま、三好 拓朗さま、Kengo Kitamotoさま、森山 達也さま


投稿者 土岐耕司 

原文作成日 2023年11月18日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 イラ
https://zukan.com/fish/internal236

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