海水魚

【アユ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(鈴鹿さん撮影)

アユの語源

いつものように、ネット検索してみました。

「「アユ」の語源は、秋に産卵のために川を下ることから「落あゆ」(落ちるの意)に由来する説がある。他にも、神前に供える食物であるというところから「饗あえ」に由来する説などがある。」 https://zatsuneta.com/archives/001735.html (2023/11/26閲覧)

「アユは産卵で川を下る姿から、「こぼれ落ちる」「滴り落ちる」という意味の「あゆる(零る)」が語源とされることが多い。 しかし、アユが川を下る姿はさほど印象的ではなく、「アユ」という音から近い言葉を探し、うまく意味が当てはめられただけと思われる。 アユの語源は上記のほか諸説あるが、非常に素早く動き矢のようであることから、アイヌ語で「矢」を意味する「アイ(ay)」が転じたものであろう。」 https://gogen-yurai.jp/ayu-sakana/ (2023/11/26閲覧)

① 零る(あゆる)
② 饗(あえ)
③ 矢(あい)

有力説を上記の3つだとして、寄せられた地方名を見てみたいと思います。

寄せられた地方名

アユとしか呼ばないことが確認された地域
 青森県青森市、長野県松本市、島根県益田市、香川県

アユとも呼ぶことが確認された地域
 滋賀県犬上郡、高知県、熊本県水俣市

アイ
 群馬県、富山県入善町、静岡県、三重県尾鷲市・南伊勢町、京都府北部由良川、滋賀県犬上郡、和歌山県、高知県、熊本県水俣市・芦北町

その他
 ヤー(新潟県佐渡南部)、ヒオ(氷魚、滋賀県琵琶湖、稚魚のこと)、チョウセンバヤ(福岡県)、ナタアユ(超大型、三重県亀山市太森町)、カラス(秋の黒くなったもの、三重県鈴鹿市)

①「零る(あゆる)」の検討

「アユ」の語尾が「ゆ」になる点を重視すれば、この説はかなりの説得力がありそうです。「ゆ→い」に訛ることは簡単そうですが、その逆の訛りにはそこそこのエネルギーが必要な気がします。その結果が全国に広がるというのには少し無理を感じますし、前出の「アユが川を下る姿はさほど印象的ではなく、「アユ」という音から近い言葉を探し、うまく意味が当てはめられただけと思われる。」という指摘もまた、説得力があるように思います。

②「饗(あえ)」の検討

清流域における魚としては他の追随を許さないほど美味で美しいことを考えれば、この説はかなり有力だと思います。「あえ」は、「あゆ」にも「あい」にも訛り得ますし。もっとも無難で安定した語源説として留保しておきたいと思いますが、「あえ」と呼んでいる地域がまったく見当たらないというのは弱い点でもありますね。

③「矢(あい)」の検討

アイヌ語がここまで広い地域に浸透するのかが、印象的は弱いところなのですが、この説は「アイゴ」の時にも出てきましたよね。アイゴの場合はその毒針が「矢」に見立てられていたと思いますが、アユの場合はその俊敏性に当てられたとのこと。水中で俊敏な魚なんていくらでもいるでしょ?っていうのが弱いところですが、佐渡の「ヤー」という呼び名はアイゴの地方名に重なってきますので、却下しづらい魅力的な説のように感じてしまいました。

「アイ」の発音やアクセントについて

「和歌山はアイゴもアイって呼ぶのですが、発音が違います😊」:田中圭氏からのコメント。

「滋賀県犬上郡です。子供の頃の話ですが、あゆとは書きますが、じいちゃんたちはアユともアイとも聞こえる様な言い方してました。」:野村 卓司氏からのコメント。

「郷里の三重県尾鷲市でも年輩の方は「アイ」でした。発音は「ア・イ↗️」という感じ。」:谷口 善春氏からのコメント。

消えゆく地方名

今回のコメントには、一世代前はこう呼んでいた的なものが目立ったように思います。現在進行形で地方名が消えていっていることを示しているようで、なんだかとっても寂しい気持ちになりました。

「年配の方はアイって言いますね。和歌山です。」:田中圭氏からのコメント。

「滋賀県犬上郡です。子供の頃の話ですが、あゆとは書きますが、じいちゃんたちはアユともアイとも聞こえる様な言い方してました。」:野村 卓司氏からのコメント(再掲)。

「50年ほど前の聞き取りですが、富山県黒部川中流域の入善町では、年配者が「アイ」と呼んでました。ちなみにアユカケは「アイカク」と呼んでいましたよ。」:稲村修氏からのコメント。

「高知県民です 亡くなった 川漁師の 父親は 鮎の 事 アイ って 言ってましたね!」吉本禎氏からのコメント。

「群馬ですが年配の方は「アイ」と呼んでいました!」:新井智貴氏からのコメント。

「京都府北部の由良川ですが、おばあちゃんはアイって言ってました。」:木下大介氏からのコメント。

「郷里の三重県尾鷲市でも年輩の方は「アイ」でした。」:谷口 善春氏からのコメント(再掲)。

「アイ(静岡の年配者)」:山梨 誠彦氏からのコメント。

「三重県南伊勢町 親父が「アイ」と言ってました。」:嶋田 春幸氏からのコメント。

「私の実家(佐渡の南部)では「やー」と言います。年配の方しか使いませんが。」:Ayuko Morikawa氏からのコメント。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
木下潤一さま、井上正一郎さま、原野 陽一さま、佐藤厚さま、大澤風季さま、平澤洋幸さま、門家重治さま、下津浦 純さま、ワダ セイヤさま、田中圭さま、大崎靖夫さま、大澤風季さま、下原 誠明さま、松﨑 圭佑さま、投王さま、西野 清水さま、田村 常雄さま、野村 卓司さま、藤井 江治さま、稲村修さま、吉本禎さま、新井智貴さま、木下大介さま、谷口 善春さま、寺井祐二さま、高平康史さま、山崎宏海さま、山梨 誠彦さま、嶋田 春幸さま、Ayuko Morikawaさま、倉科 謙二さま、桜井 好基さま


投稿者 土岐耕司 

原文作成日 2023年11月26日
内容更新日 2023年12月1日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 アユ
https://zukan.com/fish/internal106

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