海水魚

【ウツボ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(外道はトモダチさん撮影)

「ウツボ」の語源

「細長い形状が、矢を入れる容器である「靫」(うつぼ)に似ていることに由来する。」https://hachimenroppi.com/wiki/details/utsubo/ (2023/3/27閲覧)

「岩の間や穴に身を隠して住むことからで、関西地方では空洞のことをウツボラということにちなむ。」https://yuraika.com/utsubo/ (2023/3/27閲覧)


ネット上では、だいたいこんな感じでしたが、どちらであっても何となく古そうな言葉ですね。

寄せられた地方名

「ウツボ」と呼んでいることが確認された地域
 三重県南伊勢町、和歌山県、高知県、愛媛県宇和島市

その他のウツボ系
 オツボ(和歌山県)、ウツンボ(高知県安芸市)

ナマダ系
 ナマダ(千葉県南部)、ナダボ(神奈川県三崎)、ナダ(伊豆諸島八丈島)

ウナギ系
 ウナギ(伊豆諸島大島・新島・三宅島)、ンナジ(沖縄県)

キダコ系
 キダコ(長崎県長崎市・雲仙市、熊本県天草、鹿児島県長島)、ヒダコ(大分県南部)、ヒダカ(宮崎県日向市細島)、キダカ(鹿児島県本土部・屋久島)

その他
 トゥクナー(鹿児島県喜界島)、ウージ(沖縄県)

分布の傾向

今回寄せられた呼び名は4大グループに分かれるようで、それぞれの分布もはっきりしています。

①ウツボ系(紀伊半島、高知県、愛媛県)
②ナマダ系(関東)
③ウナギ系(伊豆諸島、沖縄県)
④キダカ系(九州~屋久島)

ウツボ系は、これらのなかではもっとも都に近いエリアであり、語源も古そうですから、関西地域では昔から「ウツボ」と呼んでいて、それが標準和名となったと推測します。

ナマダ系についての語源は、田中さんの仰っていることに、けっこうな説得力が感じられます。

ウナギ系は川が無い離島に限られています。現在「ウナギ」と呼ばれている半淡水・半海水魚である魚がいない地域でこのように呼ばれていることは、とても興味深いですね。

※「おそらくなのですが、ウツボには鱗がなく滑らかな体表から、「なま」は『滑らかな』という意味なのでは無いですかね? 同じ様な理由でナマズの事も指しますし、また地方名で「ナマダ」と呼びます 他にはナマコも同じ様な理由かと思います」:田中 一嘉氏からのコメント。

問題は、キダコ系

キダコ系に属するのは、①キダコ、②ヒダコ、③ヒダカ、④キダカです。 分布で見ると、西側が「キ」で始まり、東側は「ヒ」で始まる。北側が「ダコ」で終わり、南側が「ダカ」で終わる。模式図にするとこんな感じになります。

言葉が訛るためには、「訛る前の言葉」が必要です。この4つの言葉、どれがスタートになった言葉であったとしても、他の3つは成立し得ます。強いて言えば、「ヒ→キ」よりも「キ→ヒ」の方が、訛りとしては考えやすいでしょうかね。となると、「キダコ」か「キダカ」が基に近い言葉になりますが、どういう意味だったかはよく分かりません。皆さん、どう思われますか?

ウツボにまつわるエトセトラ

魅力的なお話を寄せていただきましたので、以下に紹介させていただきます。

「鹿児島県枕崎はキダカです 昔は干潮時の浅い岩場でウツボ狙いの釣りをしていました 確か、素焼きして味噌汁の出汁にしていたように記憶しています」;久保政士氏からのコメント。

「紀州です。呼び名はそのままウツボですが、すき焼きにすることがあります。地元でもマイナーな食べ方ですが、ハマる方が多い食べ方です。」:山内 啓史氏からのコメント。

「・・・高知出身の者です。ウツボは骨が多くしかも硬い。小型はあまり食用には向いていません。せいぜい煮付けてしゃぶる感じでしょうか。タタキは大型の腹身を使います。背身や肛門から下の部位は煮付けか唐揚げ(素揚げ)が無難と思います。居酒屋のメニューになるような部位は一匹から多く取れないと思います(それなりの価格になる理由かな?)。唐揚げさえうまく揚げないと骨が残って口の中や歯茎を突いてしまいます。それと臭みもありますから。下手に揚げると油がウツボの臭いになりますよ。味は悪くないですけど、やはり一般家庭では、腹身の他はハードル高いかも?ですね。」「高知県土佐清水市足摺岬地方では『ウツボ』。ガキの頃から食卓によく上っていました。だいたい煮付けが多かったです。干して小さく切って素揚げはビールによく合いますね。骨が危ないので、子供の頃はよく「気を付けろ」と言われていたので、食べるときはいまだに骨には気を付けています😅昔はタタキはしてなかったように思います。冬場魚のアラなどを入れた『ウツボかご(筒状のモンドリ)』漁をよくやっています。」:浅利主税氏からのコメント。

「鹿児島県の長島では、キダコです。 昔は食べてました。 湯引きで酢味噌で食べたり ぶつ切りで煮付けたりしてました。 エイとかフカの身に 似てますね。」:平澤洋幸氏からのコメント。

「宇和島ではウツボ、アイゴ等痛みが早い魚の中抜きしたら足元の水面上までよじ登ってきます」:岡本実氏からのコメント。

「八丈島ではナダですね、由来はわかりませんが、昔の人燻製にしてアブラを落としてから煮付けで食べてましたよ。」「燻製を作る人がいなくなって近頃あまり見かけませんね」:木村 浩司氏からのコメント。

「南紀州はウツボでした。 冬に開きにして干すのが風物詩でした。 虎柄が風に棚引いていました。基本は揚げて甘辛く味付けするオツマミでしたね。 戦中・戦後の祖母・父世代は山間と海しか無い地域で肉が高価だったのでサンマ・イルカ・ウツボですき焼きを作っていました。」:小西 英二氏からのコメント。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
日高 秀一さま、Naoki Oshioさま、Iwazy Sunさま、宮川清さま、田中圭さま、佐藤厚さま、久保政士さま、町田 賀法さま、又吉勲さま、山内 啓史さま、下原 誠明さま、内浦 和彦さま、渡辺 徹也さま、山﨑登さま、坪内茂さま、Mitsuhiro Komatsuさま、浅利主税さま、嶋田 春幸さま、髙田 一人さま、井上正一郎さま、平澤洋幸さま、田中 一嘉さま、Yutaka Hishikiさま、小野 篤司さま、池田 泉さま、大澤風季さま、岡本実さま、木村 浩司さま、小西 英二さま、高橋 伸竹さま、池辺 悟さま


投稿者 土岐耕司

原文作成日 2023年3月27日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 ウツボ
https://zukan.com/fish/internal113

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