海水魚

【タチウオ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(プレデターさん撮影)

「タチウオ」の語源

「体が細く銀白色に輝き、太刀に似ていることから「太刀魚」と呼ばれる。異説では、頭を上にして泳ぐため「立ち魚」と呼ばれたとするものもある。」
https://hachimenroppi.com/wiki/details/tachiuo/ (2023/3/12閲覧)

おそらく、これがタチウオの語源として一般的に知られているものでしょう。パッと見には「太刀」に似た美しい魚体ですので、「太刀魚(たちうお)」であることに異論がある方はおられないとは思いますが、その一方で「立ち泳ぎ」している姿を見てしまうと、後説にも一定の説得力があります。こういった、どちらかが後付けの説なのに、なかなかその説を捨て切れない魚として「マトウダイ」を挙げることができるでしょう(https://gyomei.zukan.com/?p=1577393423 をご参照下さい)。

私の実体験として、常夜灯に照らされた漁港でたくさんのタチウオが「立ち泳ぎ」しているのを見て、「なるほどな~」と思ったことがあります。でもやっぱり、他の魚にはないあの独特のシェイプは「太刀(あるいは刀・剣・サーベル)を想起させることが普通だと思いますので、タチウオの語源は「太刀(たち)」にある、ということにしておきましょう。

「語源ですが、これは私の憶測でしかありませんが、立って泳ぐからタチウオ、というのは後付けだと思います。 そんな昔から立って泳ぐってことが分かっているとは思えなくて… 太刀に似てるからタチウオ、が最初だと思っています(^^)」:吉田 直樹氏からのコメント。

「大連や青島の一部地域では刀魚(ダオユィー)と呼ぶが これは日本のタチウオという呼び名が元ではないかとの説も」:川口 晃氏からのコメント。

寄せられた地方名

タチウオと呼ばれていることが確認された地域
大阪府、鳥取県中部、山口県下関市、香川県、高知県西部、愛媛県宇和島市、長崎県壱岐市、熊本県水俣市

タチ
三重県南伊勢町、鳥取県中部、山口県下関市、香川県、高知県西部、愛媛県宇和島市、長崎県雲仙市、熊本県水俣市

タチ系
タッチョ(和歌山県箕島、水揚げ日本一の町)、タチノイオ(長崎県雲仙市)、タチヌイユー(沖縄本島中南部)

その他
ダツ(宮城県)、ハクナギ(宮城県石巻市)、ベルトサイズ(大阪府、小さいサイズのこと)
ダイユィー(帯魚、中国大陸)、ダオユィー(刀魚、大連・青島)

タチノイオ・タチヌイユーは同根の名称であり、「タチの魚」ということでしょう。助詞「の」の前には一般名詞がくるのが普通なので、「タチ」は「立ち」ではなく「太刀」の方が、やはり何となくすんなり入りますね。

ハクナギからの脱線

石巻では「ハクナギ」と呼ぶそうで、この語源についてコメント者のご意見を伺ってみました。

「ここ何年か水揚げがかなりあります。 全国でも5本の指入りそうな勢いです。 たぶんですが、白ナギ(イシナギやウナギのナギ)だと思います。」:松下 亮介氏からのコメント。

「白いウナギ≒白くて細長い魚」と言われたならば、そこで終わっていた話だったのですが、「イシナギやウナギのナギ」と言われて初めて、「ナギとは何ぞや?」と思うようになってしまいました。タチウオ本論からは少し脱線いたしますが、ウナギとイシナギの語源についてネット検索してましたので、少々お付き合い下さい。

ウナギの語源
「古来は「むなぎ」と呼ばれていました。 日本に現存する最古の和歌集「万葉集」をはじめ 昔の書物にはむなぎと表記されていたそうです。 「む→身」「なぎ→長し(長い)」を意味することから 身の長い生き物でむなぎになったという説が有力となってます。 その他にも胸が黄色いから「胸黄(むなぎ)」、 「棟木(むなぎ)」に似ているからという俗説もあります。」
https://manraku.net/event/%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%8E%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%8E%E3%81%AA%E3%81%AE%EF%BC%9F/ (2023/3/12閲覧)
「古語は「ムナギ」であり、胸が黄色いので「胸黄むなぎ」という説。細長い体形が棟の木に似ていることから「棟木むなぎ」とする説。「身」の古い語形が「ム」なので、「ムナガ」(身長)→「ムナギ」になったという説などがある。」
https://zatsuneta.com/archives/001707.html (2023/3/12閲覧)
「むなぎの語源は諸説あるが、「む」は「身」を意味し、「なぎ」は「長し(長い)」の「なが」からとする説が有力とされる。 この説では、「あなご」の「なご」とも語根が共通する。 その他、うなぎは胸が黄色いため「胸黄(むなき)」が変化したとする説や、「棟木(むなぎ)」に似ているからといった説もあるが、いずれも俗説である。 また、うなぎは鳥の鵜(ウ)が飲み込むのに難儀するからという説もあるが、うなんぎ→むなぎ→うなぎの変化は考え難い。」
https://gogen-yurai.jp/unagi/ (2023/3/12閲覧)


イシナギの語源
「イシナギは東京での呼び名。「いし」は「ひさ」の変化で「斑文」もしくは磯の意味。斑文のある魚、もしくは岩礁域(磯)に多い魚の意。」
https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%82%AE (2023/3/12閲覧)
「石投魚。「石(イシ)」は「磯(イソ)」と同語源で、「ギ」は魚を意味する接尾語ともとれるが、「ナ」の語源が分からない。漢字表記「石投魚」の「投」をナギとは読めず、音からの当て字で「投(ナ)げる」+「魚(ギ)」であろう。「投」は、木の棒でなぐる意があることから当てたか、又は投網に由来か。」
http://www.nihonjiten.com/data/45512.html (2023/3/12閲覧)

どうやら「ナギ」にもいろいろありそうですが、掘り下げるのはまたの機会に。

水揚げ日本一は、和歌山の箕島漁港だそうです

毎回、好意的にご協力してもらっている田中圭さんから、漁獲の盛んな簑島漁港におけるタチウオ利用について教えていただきました。

「太刀魚を骨ごと砕いて揚げ物にしたホネクという商品があり、町のお店がそれぞれの個性を出して、タッチョホネク丼という商品を提供しています😊」:田中圭氏からのコメント。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
宮城 大輔さま、中西 啓二さま、嶋田 春幸さま、田中圭さま、吉田 直樹さま、佐藤厚さま、大澤風季さま、高平康史さま、ワダ セイヤさま、松下 亮介さま、坂口博範さま、下原 誠明さま、末廣 孝一さま、門家重治さま、川口 晃さま


投稿者 土岐耕司

原文作成日 2023年3月12日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 タチウオ
https://zukan.com/fish/internal91

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