海水魚

【イボダイ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(閻魔さん撮影)

寄せられた地方名

エボダイ 東京都、神奈川県相模湾、愛知県
マメ・マメノヒラ 静岡県西部
マメダイ 愛知県
ヨヨシ 京都府丹後・宮津
シス 大分県中津市
シズ 愛知県、大阪府、和歌山県、岡山県、鳥取県中部、長崎県、熊本県
ウオゼ 大阪府、和歌山県
ウモレ 和歌山県
ウボレ 和歌山有田地方
ボウゼ・ボウジェ 和歌山県、徳島県
ボウゼイ 徳島県小松島市
アマギ 愛媛県松山市・宇和島市
アメタ 大分県別府市・臼杵市
アメタイ 大分県別府市
モチウオ 福岡県、長崎県、熊本県、鹿児島県長島町

※「阿波弁では「ボウゼ」ですね。お年寄りの発音だと「ボウジェ」」:原内 真徳氏コメントより。

シズとモチウオ

広い範囲におよぶものと非常に局所的なものに分けられるようです。前者としてはシズ(シス)とモチウオ(モチノウオ)が挙げられます。まず、「シズ」とは何ぞや? ということで、ネットで調べてみました。

「「シズ」の名前は、「ある港町におしずさんという丸顔の美女がおり、漁に出た漁師がエボダイが獲れると魚体が丸いのでおしずさんと呼ぶようになった」という話を何かの本で読んだことがあります。」
https://okwave.jp/qa/q851055.html (2022/4/19閲覧)

これがホントであれば、驚愕の由来話ですね。一個人の名前がこんなに広く使われるなんて。「丸顔」というだけでなく「美女」だったというのが素敵です。この「おしずさん」はどこにいた女性なのでしょうか? 「シズ」以外の呼び名を使っていないのは岡山と鳥取しかなく、これらの地域は「シズ」分布域の中央にあたりますので、中国地方の方だったかも知れませんね。

一方の「モチウオ」は、九州の東シナ海沿岸に広く分布しています。「シズ」との併用も見られ、市場では「シズ」というお話もありましたので、水揚げされた場所では「シズ」と呼ばれていたのかも知れません。モチウオの由来については、大澤風季氏から「身がモチモチしておいしいことが由来です。」とのコメントをいただいております。

※「長崎雲仙市です 市場はシズ 地域名はモチウオです。」:佐藤厚氏コメントより。

ナゾの「ウオゼ」系

大阪・和歌山・徳島には、同じ系統に属するのではないかと思われる呼び名が認められました。仮に「ウオゼ」系として、再提示します。

ウオゼ(大阪府、和歌山県) ウモレ(和歌山県) ウボレ(和歌山有田地方) ボウゼ(和歌山県、徳島県)、ボウゼイ(徳島県小松島市)

この狭い地域のなかで、激しく訛り込んでいるように思えるのですが、一体どれがスタートなのかがよく分からない状態です。でもこれについて、1つのヒントになりそうな記述をネットで見つけました。

「(イボダイ) 別名:ウボセまたはウボゼ(姥背)、ボウゼ、シズ、モチウオやモチノウオ、マメダイ」
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fish/Ibodai.htm (2022/4/19閲覧)

上記では、ウボゼにだけ漢字表記の「姥背」が当てられていて、何か意味ある感じ。背中がおばあさんのように丸いという解釈なのでしょう。仮に原形が「ウボセ=ウバセ」であったとして、その他の呼び名への転訛は不可能ではないかも知れませんが、それにしても変化が激しいです。口伝えでこうなってしまったとしか、今のところは言えないようです。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
下原 誠明さま、伊藤 成康さま、佐藤厚さま、和田 俊章さま、間所 幸一さま、瀧下彰信さま、中西 啓二さま、佐藤 文広さま、浅野潔さま、森田晃行さま、中野 良太さま、田中圭さま、伊藤真次さま、宮下和成さま、大澤風季さま、大河内恵介さま、原内 真徳さま、村山 茂樹さま、井上正一郎さま、阪本 秀樹さま、門家重治さま、Shinichiro Yonezawaさま、黒木 康充さま、野村 卓司さま、大野真吾さま、鬼頭 泰史さま、奥田憲治さま

投稿者 土岐耕司

原文作成日 2022年4月19日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 イボダイ
https://zukan.com/fish/internal593

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