海水魚

【キジハタ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(マリトコさん撮影)

寄せられた地方名

アコウ
 福井県、愛知県、京都府、大阪府、和歌山県和歌山市、兵庫県、岡山県、広島県(三原市ではアコウダイとも)、島根県、山口県下関市、高知県土佐清水市、愛媛県今治市、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県
アコ
 大阪府堺市、和歌山県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、長崎県平戸市度島町
アク
 和歌山県
アカミズ
 島根県、山口県萩市
アズキマス
 愛知県、三重県
ナメラ
 富山県氷見市、石川県(能登ではナメラバチとも)、福井県
ヨネズ
 富山県氷見市、京都府丹後地方(イネズとも)
その他
アズキンボウ(秋田男鹿半島)、ヤマドリ(富山県東部)、モン(高知県)、アカボコ(長崎県雲仙市)、シブクメ(熊本県天草)、ムブシ(鹿児島県枕崎市)

ネットから引用

まず、「キジハタ」の語源について。

「目は緑色で、キジハタの語源となったキジ色をしている。」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%82%B8%E3%83%8F%E3%82%BF (2022/5/2閲覧)

「東京での呼び名。キジ(鳥)のような文様を持つハタの意味。」
https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%82%AD%E3%82%B8%E3%83%8F%E3%82%BF (2022/5/2閲覧)

目の色なのか、それとも体の文様なのか、少し分かれるところですが、両者とも鳥の「雉(きじ)」に由来しているのは共通しています。

地方名としては最大勢力となった「アコウ」についてはどうでしょうか。直接的に語源に言及しているネット記事は見つかりませんでしたが、当て字として「赤魚」と書くものがありました。

アコウって、もしかして赤穂?

アコウは「赤魚」の短縮した結果なのでしょうか? 赤いといえば赤いですが、もっと赤い魚は他にもいる気がします。

アコウという響きから、まず私が思い浮かべるのは『忠臣蔵』で有名な「赤穂」、つまり兵庫県の地名でした。今回は、瀬戸内海沿岸の方々からのコメントが目立ちましたし、ほとんどが「アコウ」と呼んでいるという結果。もしかして、赤穂市周辺でよく釣れるからという、地名由来の地方名なのではないか(チヌがそうでしたし)。そう思って、地名としての「赤穂」の語源を調べてみました。

「千種(ちくさ)川河口に発達したデルタに立地。地名の由来は、海辺に生じる蓼の穂が赤いこと、また元正天皇の時赤穂の蓼が生じて帝へ奉献したことによると、いずれも特産の赤い穂の蓼に由来する。」
https://folklore2017.com/timei900/0299.htm (2022/5/2閲覧)

赤い穂が多いから「赤穂」。キジハタの模様も、シンプルに「赤い穂」に見立てたってことか?「そんなの当たり前でしょ?」って言われそうな、一人勝手に遠回り。

他の呼び名もそのパターンのものが多いですな。アカミズは赤い水玉模様だし、アズキマスは小豆みたいな模様のマス(ハタ)だし。

地方名の分類

いま一度、寄せられた地方名を分類してみます。

赤いプチプチ模様に起因するもの
アコウ:赤い穂の模様・・・アコ・アクは転訛の結果と考えられる
アカミズ:赤い水玉模様
アズキマス:小豆に似た模様・・・秋田の「アズキンボウ」もこの仲間
その他・・・ヤマドリ、モン

体表がなめらかなところに起因するもの
ナメラ

夜行性であることに起因するもの
ヨネズ:「夜寝ず」か

ヨネズについては、丹後地方では「イネズ」とも言うそうで、「米」「稲」にも通じるかも。穀物由来なのであれば、体表の模様に関係している可能性もなくはないかもしれません。

※(ヤマドリについて)「色々な説を聞きましたが、1.見た目(色合い等)が山の鳥のようなところから 2.大量にパッと現れてパッといなくなる様子から 3.水中では木の枝のような場所を好むところから …と、どれが理由なのかは分かりませんが、どれもそれっぽいなァと思います。」:浜松 拓実氏コメントより。

※「富山、氷見ではヨネズと言っています。夜行性だからだと思います。」:よしたき みつお氏コメントより。

※「福井県、ナメラです。 北陸ではこの呼称が多いような気がします。 名前の由来ですが体表がツルッとしていて「滑らか」な事から付いたとの事です。 普段は海底の岩の間やテトラに張り付いている魚なのでこういった体表になったのでしょうか。」岡 繁典氏コメントより。
※「能登では「ナメラ」とか「ナメラバチメ」だと思います。 「ハチメ」とは、メバル・ソイ・ハタ類の総称で、例えばソイなら「ソイバチメ」となります。 ナメラはヌルヌルしてるからでしょうね、おそらく。」:元谷 寿氏コメントより。

コメントの傾向

今回は3つの面白い傾向がありました。1つは、瀬戸内~九州ではアコウ系、山陰はアカミズ、伊勢湾はアズキマス、北陸はナメラとように、地方名が地域ごとにくっきり分かれていることです。この傾向はカサゴの地方名の在り方ともよく似ている気がします。ちなみに、キジハタとカサゴの関係については、興味深いコメントもいただいております。

「一昔前は夏場の高級魚で幻の魚とも言われていたそうですが、稚魚放流の成果か増加しているように感じています。で水産関係の方から聞いた話、アコウ(キジハタ)ってツガイで居るのか一つ釣れたらすぐに同じ場所に仕掛け入れろ!って言いますよね。 そのせいかどうか、同じような場所に生息する赤チン(とカサゴの事を呼んでます。)を追い出しちゃうらしいんですよね。しかも赤チンの子を食べてしまうと。 だからアコウは増えても赤チンが激減しててアコウの稚魚放流について中止を検討してるとか。上手く共存してくれりゃいいのにねー」:阪本 秀樹氏コメントより。

2つ目。いつもはかなり似通った傾向がみられていた紀伊半島において、三重県ではアズキマス、和歌山県ではアコウ・アコ・アクというように、くっきりとした地方名の境界線が認められたことです。

そして、3つ目。いつもは熱いコメントを寄せてくれる高知県勢の様子が、今回はなんとなく変でした。キジハタなんかあんまり気にしていない、あるいは生息数が少ないのか、そんなコメントが寄せられました。

「高知やと、こんな点々あるのは全部「モン」やぜ?キジもなーんにも。」:刈谷彰宏氏コメントより。
「高知県宿毛市ですが、あまりハタを区別して呼び分けていません。 オオモンハタがイギス、マハタがマスで、聞いたことあるのはそのくらいです。 キジハタは当地ではうんと少なくて、堤防釣りで自分が釣ったのと人が釣ったのと合わせてこれまで3回しか見たことありません。 あ、これがキジハタか、って感じです(笑)」:末廣 孝一氏コメントより。

分布について確認できたこと

「ここ数年青森県でも釣れてます!」:落合 泰樹氏コメントより。
「鹿児島県枕崎です ムブシです しかしこの地方ではあまり見ないので知ってる人は少ないです 市場の担当者でも知らない人がいるほどです」:久保政士氏コメントより。
「徳之島には居ません。。が、全国区の地方名のアレは通じます(^-^)」:Kengo Kitamoto氏コメントより。

「WEB魚図鑑」に記載されている「青森県以南~九州までの日本各地。朝鮮半島南部、中国、台湾。日本海側や瀬戸内海でもよくみられる種類である。」という分布状況に、みごとにハマりました。ただやはり、北限の青森、南限の鹿児島ではそもそも多く生息しているわけではないのでしょうね。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
井上恵介さま、浜松 拓実さま、佐藤厚さま、井上正一郎さま、田中圭さま、樋口 博也さま、Takashi Onbéさま、堀川 有道さま、舩本 誠一郎さま、恒川 幸聖さま、辻岡 拓郎さま、Shinichiro Yonezawaさま、高橋 弘一さま、足立 勝也さま、落合 泰樹さま、若下藤雄さま、石垣秀明さま、Chappy Sugieさま、Takuya Nakaoさま、柳樂 聖治さま、新井和幸さま、間所 幸一さま、峰岸 剣さま、古谷 久志さま、倉井 学さま、山田重行さま、中島 正晴さま、嶋田 春幸さま、福畑 敏光さま、寺井祐二さま、阪本 秀樹さま、大澤風季さま、前野 美弥次さま、岸 大介さま、川畑敏則さま、深田吉宜さま、Kengo Kitamotoさま、刈谷彰宏さま、久保政士さま、石川 力さま、よしたき みつおさま、山田剛也さま、有留幹夫さま、岡田 健作さま、Masahiro Inoueさま、大塚 泰介さま、岡 繁典さま、松尾保司さま、加藤真吾さま、岸本 茂樹さま、浅利主税さま、末廣 孝一さま、仲野肇さま

投稿者 土岐耕司

原文作成日 2022年5月2日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 キジハタ
https://zukan.com/fish/internal278