海水魚

【ハオコゼ】その魚名を考える


画像:WEB魚図鑑より(KOUJIさん撮影)

不思議な現象

今回の地方名募集、不思議な現象が認められました。コメントを寄せてくれたのは39名、そのうち地方名の情報が含まれていたのは35件でした。この35件のうち21件が瀬戸内海沿岸であり、広島県に限定すると11件にのぼります。

このような瀬戸内海沿岸への偏りは、「キュウセン」以来の現象です。キュウセンは広島・愛媛あたりでは食用魚として非常に好まれていて、今回もそれかな?と思ったのですが、どうやら食用魚として愛されている訳でもないみたいでした。

寄せられた地方名

カラコギ系
 カラコギ(広島県、愛媛県)、カラコゲ(広島県、山口県瀬戸内海側、愛媛県伯方島)、カナコギ(広島県、山口県瀬戸内海側、愛媛県松山市)

ヒメ系
 ヒメ(広島県福山市)、ヒメオコゼ(広島県備後地方・島嶼部、島根県、山口県)、オヒメサン(広島県島嶼部、愛媛県松山市)

イッスン系
 イッスン(長崎県対馬)、イッスンオゴゼ(長崎県平戸市度島町)、イッスンオコゼ(福岡県)

その他
 オコゼ(三重県南伊勢町、愛媛県宇和島市、熊本県水俣市)、オコオジン(千葉県)、ヤマノカミ(千葉県内房・勝浦市)、ハチ(富山県)、アマタテ(三重県志摩)、アカメ・アカメフグ(京都府丹後)、スナッパリ(和歌山県)、イタチン(兵庫県淡路島由良)、ヨメサン(兵庫県瀬戸内海側)、ハナオコゼ(岡山県)、ギギ(広島県小豆島)、キンギョ(広島県、香川県、愛媛県松山市)

分類してみます

①「カラコギ」系・・・カラコギ・カラコゲ・カナコギ
この系統の呼び名が非常に多かったので、後で検討してみます。

②「カワイイ≒キレイ≒女性」系・・・ヒメ・ヒメオコゼ・オヒメサン・ヨメサン・ハナオコゼ・キンギョ
実は私、今まで一度もハオコゼを釣り上げたことがありません。なので、「キレイな魚≒女性を彷彿とさせる魚」という実感を得たことがないのですが、以下のコメントからはそういった着想があるのかも、と思いました。

「多分ですが、見かけが艶やか?なのでそう呼ぶのかと、子供心に思いました、釣り上げたときは綺麗ですもんね」:池田 正光氏からのコメント。

③逆に「醜い」系・・・オコゼ・オコオジン・ヤマノカミ
オニオコゼの回でも触れましたが、オコゼの「オコ」は醜いという意味らしい。で、同じく醜いとされる「山の神」の怒りを鎮めるために供えられた魚として、「ヤマノカミ」という呼び名があるようです。この「ヤマノカミ」と呼ばれる魚は他にもいます(ミノカサゴ・オニオコゼ・オニカジカ・カジカ・ケムシカジカ・ツマグロカジカ・ナベカ、そしてハオコゼ)が、「醜い・厳つい」という範疇に入りそうな魚ばかりと言っても良いでしょうね。

https://tsurinews.jp/188911/2/ (2023/8/25閲覧)

https://www.zukan-bouz.com/aka/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%8E%E3%82%AB%E3%83%9F (2023/8/25閲覧)

④「刺される」系・・・ハチ・イタチン
意外にも、この系統の呼び名は少なかったです。
今回得られた地方名を勝手に分類した結果、意外にも②「カワイイ≒キレイ≒女性」系が多いということが分かりました。ナゾの①「カラコギ」系も、こちらに属した呼び名なのかもしれないと思うようになりました。

「カラコギ」系の集計

カラコギ(広島:4、愛媛:3)、カラコゲ(広島:1、山口:1)、カナコギ(広島:6、山口:2、香川:1、愛媛:1)

「カラコギ(カラコゲ)」と「カナコギ」を比較してみますと、割と拮抗しているように感じます。この両者のどちらかが語源に近いものと思われますので、それぞれを検討してみます。

「カナコギ」とは?

硬くて刺さるトゲがあるという意味で、当初は「金釘(かなくぎ)」を疑いました。しかし、「コギ」はあっても「クギ」が見られないところから、この説はボツとしました。

ネットで「カナコギ」を検索すると、熊本県の地名・姓としての「鹿子木(かなこぎ)」がヒットします。肥後北部に鹿子木氏という豪族がいたことを思い出しましたが、この言葉が広島周辺に広がっていることの説明ができません。

では、「鹿子(かのこ)+魚(き)」ではどうでしょう。たしかにハオコゼはキレイな魚ですが、鹿子模様とは言えない気がします。

というように、どれも今一つ、ピンとくるものがありませんでした。

では「カラコギ」とは?

「唐子(からこ)+魚(き)」と考えて、「唐子」を検討してみたいと思います。よく知られているのは、陶磁器のお碗やお皿に描かれた中国の子供たちの絵だと思います。この可愛さはハオコゼに通じるも気もします。でも、「唐子」にはもう1つ意味がありました。

「唐子(からこ)は、『諏方大明神絵詞』(1356年成立)に記された、14世紀初頭の蝦夷島(えぞがしま)に居住していた3集団のひとつ。」「『諏方大明神絵詞』は、「渡党」に関してはいくらか詳細に描いており、和国の人に似てはいるが毛深く、訛りは強いものの言葉が通じるなどとしている。また、男子の戦闘の際には女子は後方にあって呪声(ウケエホムシュ)を唱え、乗馬の習慣はなく、弓矢の骨鏃に毒を用いるなどの文化的特徴が示され、これらはいずれも近世アイヌの文化的特徴と一致している。」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%94%90%E5%AD%90_(%E8%9D%A6%E5%A4%B7%E5%9C%B0) (2023/8/27閲覧)

こちらの「唐子」の方が、ずいぶんと古い言葉のようですね。「弓矢の骨鏃に毒を用いる」というところがハオコゼに通じるものがありますが、私の考えすぎでしょうか。

相当痛いみたいです

実際にハオコゼに刺された方からの経験談が寄せられました。

「小学校の夏休みに刺されて一晩苦しんだことが思い出されます。」:嶋田 春幸氏からのコメント。

「ダイバーの天敵ですね 指を何回も刺されました・・・ 不用意に海底に手をつくと待ち構えています」:梶田 淳氏からのコメント。

「広島ダイバーです。 ・・・なお刺されたら 熱々の湯につけたら すぐに解毒 痛みも消えます」:重光陽一郎氏からのコメント。

「岩国で、釣り上げ刺されました。 あの痛みはたまったものではありませんね」:大野真吾氏からのコメント。

「昔、須磨海釣り公園で釣れたハオコゼを掴んでしまい最初は大したことなかったのですが、段々痛みが増して1時間後には肩まで来たので帰りました。」:上村 好正氏からのコメント。

「刺されたというよりも、針をはずそうとして誤って指を腹鰭にもっていきました。 手首までうずき、痛かった。」門家重治氏からのコメント。

でも美味しいみたいです

「広島です ・・・味噌汁の具です。」「美味しいですね 釣れたらちょんぎって持ち帰りです。」舩本 誠一郎氏からのコメント。

「魚屋には並びませんし、身は少ないですし棘が危険ですが、凄く良い出汁が出るので料理をする釣り人には嫌われていません。」:新谷 光生氏からのコメント。

「昔に一度だけですが…キス釣りの際にカナコギの大漁(貰ったのも合わせて大サイズ20匹くらい)でフルコース(みそ汁・塩焼き・煮付け)にしたことがあって、美味しかったです。」:河野徳夫氏からのコメント。

激減?

「瀬戸内海の備後地方はヒメオコゼですが、、現在はほぼ絶滅してしまいました💦 原因はおそらくですが、アコウ(キジハタ)の大量放流だと思われます。 アコウの大量放流が原因でしょうか、クジメもギンポもほぼ絶滅しました。 年間かなりの日数釣行していますがヒメオコゼもクジメもギンポももう10年は見ていません。」:平井 利直氏からのコメント。

「長崎県平戸市度島町 「一寸オゴゼ」です。 20年前位までは居ましたが、磯焼けが進むと共に少なくなり今は1匹も見ません‥」:福畑 敏光氏からのコメント。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
田中圭さま、森近 涼さま、inaba裕介さま、嶋田 春幸さま、梶田 淳さま、ワダ セイヤさま、池田 正光さま、下山勉さま、村上公一さま、Kazuyuki Kondoさま、吉田隆さま、山下 司さま、飯田 久貴さま、舩本 誠一郎さま、梶田 淳さま、重光陽一郎さま、原田 尚彦さま、川崎晃弘さま、大野望さま、寺井祐二さま、谷本頼保さま、大野真吾さま、森沢 明夫さま、阿部正人さま、新谷 光生さま、平井 利直さま、柚原 朋宏さま、福畑 敏光さま、河野徳夫さま、渡辺浩則さま、川崎友和さま、峰岸 剣さま、田中 智徳さま、上村 好正さま、木下大介さま、門家重治さま、大澤風季さま、前田 洋さま、濱口久貴さま、沖野 実さま、成瀬孝一さま


投稿者 土岐耕司 

原文作成日 2023年8月27日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 ハオコゼ
https://zukan.com/fish/internal41

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