画像:WEB魚図鑑より(閻魔さん撮影)
「マナガツオ」の語源
マナガツオの「マナ」の語源は諸説あるが、「食用の魚」を意味した「真魚」の説が有力である。「マ」は「本当」「真実」を意味する「真」、「ナ」は副食物を意味した「菜(肴)」で、「真魚」は最も価値のある副食物の意味が語源。 つまり、マナガツオは「真にうまい魚(カツオ)」の意味と思われる。 ただし、1597年(慶長2年)刊の『易林本節用集』には、「学鰹 マナガツオ」とある。 「学」が当て字ではなく「まねる」の意味とすれば、カツオが捕れない瀬戸内海でカツオに見立てられたとする「真似鰹(マネガツオ)」の説が有力となる。 https://gogen-yurai.jp/managatsuo/ (2023/5/18閲覧)
真似鰹:カツオのいない瀬戸内海などでカツオがとれないので、初夏にとれる本種を「カツオに見立てた」ところから。「真似鰹(まねがつお)」から転訛したもの。
鯧魚:〈マナガツヲ マナガタ〉。「マナガタ」は真菜刀(まながたな/幅広の包丁)ともとれなくはないが、よくはわからない。『本朝食鑑』(人見必大 島田勇雄 訳注 1697)・『本草綱目啓蒙』(小野蘭山 東洋文庫 平凡社 文政12 1829)
真魚(まな)と鰹:「真魚」はとりわけ味のいい魚という意味。「鰹」は近畿地方の、魚貝類の供給地である瀬戸内海にカツオがいなかったために、本種をカツオと呼んでいたため。
学鰹:『本朝食鑑』(人見必大 島田勇雄 訳注 1697)にあるが不明。 https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%9E%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%83%84%E3%82%AA (2023/5/18閲覧)
ざっくり言うと、①「美味しい(マナ)+魚(カツオ)」、②「真似(マネ)+鰹(カツオ)」となりますかね。だけど、①において、魚=カツオと言っている理由が分かりません。②の方が、理由もはっきりしていて説得力がある気がします。いずれにせよ、「カツオ」がいないと「マナガツオ」という呼び名は生まれなかったでしょうし、その「マナガツオ」に似ているからという理由で「シマガツオ」という呼び名も生まれたことになります。異なる科の魚でありながら、その呼び名が生まれた順番が推定できる、面白い一群ですね。
それでは「カツオ」とは?
「カツオ」は、漢字で書くと「鰹(魚ヘンに堅)」であり、読み方も「堅い魚(うお)」から来ていることは、皆さんも想像つくかと思います。だけど、カツオの何が堅いのでしょうか。思いつくのは「鰹節(かつおぶし)」ですが、当然これは加工後の状態ですし、人間がわざわざ堅くしたのだから、何か順番が違う気がします。ということで検索してみました。
カツオは、『古事記』や『万葉集』では「堅魚カタウオ」という漢字表記で登場する。この「カタウオ」が変化して「カツオ」になったというのが通説。他にも、カツオは疑似餌ぎじえでどんどん釣れるくらい「頑かたくなな魚」だから、「カタウオ」(頑魚)→「カツオ」になったという説。弱いイワシに対して、強い魚だから、「勝つ魚」→「カツオ」となったとう説がある。https://zatsuneta.com/archives/001714.html (2023/5/18閲覧)
カツオは、「カタシ(堅し)」の「カタ」に「ウヲ(魚)」で「カタウヲ」となり、転じて「カツヲ(カツオ)」になったといわれる。 加工されていないカツオは、鎌倉時代まで低級な魚として扱われ、主に干し固めて食用としていたことや、肉がしまっていること、『万葉集』などには「堅魚(カツヲ)」の表記があることから、「カタウヲ」の説は有力とされている。 また、カツオは釣り上げると木の棒で叩いたり、ぶつけたりして処置しておくことから、棒などで打ちたたく意味の「カツ(搗つ)」に「魚(うを)」で「カツウヲ」となり、転じて「カツヲ」になったとする説もある。 魚の名前の多くは漁師から生まれたと考えられており、搗つことはこの魚の特徴的な処理法であるため、「搗つ魚」の説も十分に考えられる。https://gogen-yurai.jp/katsuo/ (2023/5/18閲覧)
いろいろとあるようですが、万葉の時代に「堅魚」と書かれているのだから、やはり「カタウオ」が元の形なのだと思いたいです。
寄せられた地方名
マナガツオと呼んでいることが確認された地域
千葉県、三重県南伊勢町、大阪府、香川県
マナガタ
長崎県雲仙市、熊本県
その他
テツビン(静岡県伊豆)、チョウチョ(和歌山県、小型のもの)、カツオ(和歌山県、大型のもの)
「マナガタ」考
長崎・熊本からは、「マナガタ」の呼び名をいただきました。マナガツオとは「マナ」の部分が共通していますね。では、「ガタ」とは何なのでしょうか?
「真名 マナ 鰹 かたうお が、略されたものと、 推測されます。 九州はよく濁点を つけがちなので マナガタで、 良いかと考えております。」:藤田 竜人氏からのコメント。
この説は、けっこうな説得力があると思います。ただし、論理的に言えば「カツオがまだ「カタウオ」と呼ばれていた頃に「マナガタウオ」という呼び名が生まれ、それぞれが「マナガツオ」「マナガタ」と変化した」というのが前提となるでしょう。
真の答えは「神のみぞ知る」ですが、こうやっていろいろ妄想できる魚名・地方名は、やっぱり楽しいです。
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佐藤厚さま、嶋田 春幸さま、八尋哲也さま、大澤風季さま、重光陽一郎さま、田中圭さま、下原 誠明さま、山出 潤一郎さま、八柳 雄さま、井上正一郎さま、こが まさゆきさま、高平康史さま、藤田 竜人さま 投稿者 土岐耕司 原文作成日 2023年5月18日 ※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。 WEB魚図鑑 マナガツオ https://zukan.com/fish/internal3029