画像:WEB魚図鑑より(もぶらさん撮影)
北日本では「ハモ」です
今回の地方名募集では、久々に北日本からのコメントが多く寄せられました。20人中8人が北日本からでしたが、そのいずれもが口を揃えて、アナゴのことを「ハモ」と呼んでいました。少し調べてみると、どうやら「ハモ」は古い言葉で、それに対して「アナゴ」という言葉は比較的には新しい言葉であった可能性がありそうです。
だから何?ということにはなるのですが、いろいろと考えを巡らせることこそが目的の1つでもあります。あれこれ考えながら進めたいと思います。
「アナゴ」の語源
「夜行性の魚で、砂泥地の穴に潜り込むことから「穴子」と呼ばれるようになった。地域によって「ハモ」と呼ばれる。「ハカリメ」「メジロ」「キンリョウメ」、「ホシアナゴ」、「スジアナゴ」、「ヨネズ」、「ペエスケ」、「ペスケ」、「レイスケ」、「デンスケ」、「リンスケ」、「トオヘイ」、「ベラタ」、「ドテタオシ」、「メバチ」、「ビリ」などの地方名を持つ。小さなものはメソと呼ばれる。またレプトケファルス(稚魚)は、ノレソレ(高知県)、ナガタンクラゲ(和歌山県)、ハナタレ(兵庫県)などと呼ばれる。」 https://hachimenroppi.com/wiki/details/maanago/ (2023/4/10閲覧)
「日中は岩穴や砂の中に棲む夜行性の魚であることから、「あなご」と呼ばれるようになったとする説が有力とされる。 この説では、「穴籠り(あなごもり)」が変化して「あなご」になったとの見方もある。 また、あなごの「なご」の語根が、うなぎの「なぎ」と共通し、水中に棲む長い生き物を「nag」の音で表していたとも考えられている。」https://gogen-yurai.jp/anago/ (2023/4/10閲覧)
寄せられた地方名
アナゴ類全般に対する呼び名と、各種ごとの呼び名が混在しているため、少々煩雑になることをお許し下さい。
アナゴ類
アナゴ(岩手県南部、三重県南伊勢町、兵庫県神戸市、香川県)、ハム(岩手県山田町)、メジロ(愛知県知多半島)、ホシアナゴ(和歌山県)、トクヌクワー(沖縄県)
マアナゴ
ハモ(北海道太平洋側、岩手県、宮城県)、マハモ(宮城県)、アナゴ(愛媛県松山市、熊本県水俣市)、アナコ(熊本県熊本市)、ハカリメ(千葉県内房、愛媛県宇和島市)、チキリノメ(長崎県雲仙市)
クロアナゴ
ハモ(岩手県南部)、オキハモ(岩手県山田町)、トウヘイ(愛媛県松山市・宇和島市)、クロトコ(長崎県雲仙市)、デンスケ(愛媛県宇和島市)、ドグラ(熊本県水俣市)
大型の(太い)アナゴ
デンスケ(大阪府、兵庫県神戸市)、デン(大阪府)、デースケ(広島県備後地方)、ベエスケ※(香川県)
ダイナンアナゴ
ハモ(岩手県南部)、ウシハモ(宮城県)
ギンアナゴ
ウスハモ・ナイロンハモ(宮城県石巻市)
イラコアナゴ
オキハモ・クロハモ・カラスハモ(宮城県)
ホラアナゴ
オキハモ(宮城県石巻市)
出世名
ノレソレ→ビリ→アナゴ→デンスケアナゴ(兵庫県神戸市)
※「お寿司の漫画に書いてありました。 瀬戸内海でとれた。 大きい穴子 すけべえが訛って ベエスケになったとの事です。」「おすもじっ!と言う 漫画です。 少年サンデーで連載 されていました。」→出典元の漫画のセリフから。「瀬戸内で捕れた大きいアナゴのことや・・・ 「すけべえ」が訛って「べえすけに」になったんやと・・・ 太くて大きいさかい・・・」
ウナギ目って不思議です
どうやら、ウナギ目の主要魚である「ウナギ」「ウツボ」「ハモ」「アナゴ」の呼び名(地方名)については、複雑な混同があるようです。今回のアナゴについては、北日本において「ハモ」との激しい混同が認められました。東北以北では、標準和名「ハモ」の分布・利用が希薄であるにも関わらず、です。この現象は恐らく、地方名を考えるうえで非常に重要な何かを示唆しているものと感じますが、それが何なのか、今の私には解読できません。
アナゴにまつわるエトセトラ
「(仙台では)私は魚屋で見た事も釣った事もないです。お店ではどうかな。鱧が出るようなお店に行った事ないから分かりません!」:矢野 誠恭氏からのコメント。
「北海道海域では、本来のハモは分布していないか、馴染みの無い魚ではないかと思われます。」:大野真吾からのコメント。
「(石巻市では)マアナゴは最近ブランド化し、地元名物にもなっています。 元々関東等にもかなりの量を出荷しています。」
https://www.pride-fish.jp/JPF/pref/detail.php?pk=1427697078 :松下 亮介氏からのコメント。
「岩手の山田って田舎町ですが、クロアナゴをハモ、沖ハモって商品名で売ってますね 宮古~釜石辺りは生、一夜干しをハモで売ってるの多いですね 小さい時にアナゴをハモ、クロアナゴを沖ハモって教わりましたよ なので、中学生の頃までアナゴをハモだと思ってました 漁師のじいさま達はハモですらなくハムって言います」:小林 久修氏からのコメント。
「マアナゴは大体宮城県の北から南まで「ハモ」で通じるのではないかなと思います。 ものすごく利用されるかといえばそうではないかもしれませんが、初夏〜秋頃には地域密着のスーパーには置いてたような気がします。 数は少ないと思いますが、アナゴ狙いの遊漁船も出ています。 一度底びき網で獲れた塩ビパイプぐらいありそうなマアナゴを見た時はびっくりしました。金華山以北のものは大きいが、金華山以南のものは小さいと漁師さんに聞きました。」:松﨑 圭佑氏からのコメント。
「宮城では、アナゴ類は「ハモ」と呼び、標準和名マアナゴは、単にハモ又はマハモ。ダイナンアナゴはウシハモ、イラコアナゴは、オキハモ、クロハモ、カラスハモと言った具合です。極稀に標準和名ハモも底曳き網で漁獲され、ビール瓶位太い物を見たことがあります。また、標準和名マアナゴも、以前は、大蛇と言われたクロアナゴに匹敵する大物が獲れましたが最近は、見かけなくなりました。 寿司種や天ぷらが有名なマアナゴですが、小型の物は焼き干しにして、お正月の雑煮や煮物の出しに利用されます。松島湾が豊だった時代には、ハゼをはじめ、ウナギやマアナゴを焼いて出荷していた家もありました(今もヤキヤと言う屋号)」: 鈴木裕充氏からのコメント。
コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
田中圭さま、佐藤厚さま、嶋田 春幸さま、野村 卓司さま、大澤風季さま、矢野 誠恭さま、大野真吾さま、淺井 寛太郎さま、川都海彦さま、松下 亮介さま、又吉勲さま、平松剛之さま、齋藤利暢さま、高平康史さま、小林 久修さま、門家重治さま、松﨑 圭佑さま、山本 哲也さま、鈴木裕充さま、大江浩之さま 投稿者 土岐耕司 原文作成日 2023年4月14日 ※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。 WEB魚図鑑 マアナゴ https://zukan.com/fish/internal125