海水魚

【メッキ】と呼ばれる魚を考える


画像:WEB魚図鑑より(海人さん撮影)

はじめに

今ではかなり一般的に使われている、「メッキ」という地方名を募集した主眼は、どの魚種を指しているのか? ということでした。しかし、皆さんからのコメントを読んでいて、この話のツボはもう少し別なところになるのではないかと思うようになりました。以下に、ポイントとなりそうなコメントを提示してみます。

寄せられたコメント

「もともとカイワリを指す言葉でした。 いつの間にか ギンガメアジの仲間の 当歳魚に変わってしまった気がします。」:佐藤厚氏からのコメント。

「和歌山県日高郡由良町糸谷 祖父が「メッキは美味い、高級魚や」と話していました。 体型が丸いつまり鯛に近いアジ科の魚でした。 標準和名「カイワリ」に良く似ていましたがハッキリ種名まではわかりません。」:和田 俊章氏からのコメント。

「高知県西部 カイワリのことをメッキと言います。 ギンガメアジ属などの幼魚はエバで、エバの中でやや細長いシルエットのもの(ギンガメアジやオニヒラアジ)をナガエバと言うこともあります。 最近はネットの影響かエバのことをメッキと呼ぶ人が増えてきましたが、道の駅などカイワリはメッキ、ギンガメアジなどはエバとしっかり区別して売っている所もあり、そういうのを見るとここの店は分かってるなあ〜と思います。」:末廣 孝一氏からのコメント。

「漁師さんはカイワリのことを言います。アングラーはギンガメアジ、カスミアジ、ロウニンアジの幼魚の総称です。和歌山です。」:田中圭氏からのコメント。

「愛媛県宇和島市では、ギンガメアジ属4種(ギンガメ、カスミ、ロウニン、オニヒラ)の幼魚、およびカイワリをメッキアジと呼ぶようです。 これに加えて、マルヒラアジ、リュウキュウヨロイアジなどの平たいアジ類も同様に呼ぶと思います。 なお、松山市のスーパーでも、カイワリがメッキアジとして広く売られています。 ヒラアジ類幼魚よりも、底引き等でまとまって漁獲されるからでしょうね。」:門家重治氏からのコメント。

「私が初めて「メッキ」という言葉を実際に聞いたのは、1992年に明石市に住む海釣りの師と宮崎県の耳川で、エバ釣りをした時でした。エバ=メッキ(ヒラアジ類の幼魚の総称)なのですが、現在では宮崎でも普通にメッキで通じます。関西の釣り雑誌からの移入だろうと思います。関西の、と考えるのは東京湾にもメッキはほとんどいなかったと思われるからです。 その関西も、比較的水温の低い瀬戸内海にどのくらいメッキがいたものか、あるいは和歌山あたりで釣っていたのか、メッキという言葉自体、和歌山あたりから大阪へ移入したのか、そのへんは調べてみると面白そうだなと思っています。」:山出 潤一郎氏からのコメント。

「熊本県水俣市もギンガメアジの当歳魚ですね!元々の地方名というより釣り人などから伝わった呼び名という印象ですね…元々はヒラアジだったので(^^)」:大澤風季氏からのコメント。

「メッキは地方名ではなく釣り人用語のはず」:江川 正己氏からのコメント。

「関東ですが、ロウニンアジ、カスミアジ、ギンガメアジなど、南方系の平たいアジ全般の幼魚を指す呼称として使います 概ね30cmぐらいになると「デカいメッキ」で、それを超えるとそれぞれの種名で呼びます 関東の近海でそのサイズに出会うことはまずありませんが」「釣り歴は30年ほどになるのですが、20年前には既にそう認識していたと思います ハッキリとは思い出せませんが、ルアーの対象魚としての呼称を、釣具屋か釣り雑誌で見たような気がします ルアーのパッケージ等にも、20年前には既にメッキという言葉が登場していたように思います」:Rei Kobayashi氏からのコメント。

これらのコメントには、3つのキーワードがあるように感じました。「カイワリ」「ヒラアジ類」「釣り人」です。

① カイワリ

標準和名「カイワリ」という魚については、割と古くから「メッキ」と呼ばれていた節があるように感じました。味の良さから評判の良い魚ではありますが、魚に詳しくない人にとってみれば「カイワリ」と言われてもそれが魚名だとは考えないでしょう。

やや細長いマアジに比べると、丸くて平たい形。必然的にキラキラと煌めく印象が強くなる。このことが「メッキ」と呼ばれる所以だと想像することは容易だと思います。「メッキ(鍍金)」という言葉自体は古くからありますから、カイワリも昔からこの名前で呼ばれていた(つまりは地方名)としても、何の不思議もないでしょう。上記コメントにも、「漁師さんはカイワリのことを「メッキ」と呼んでいる」といった内容がみられることが、それを傍証しているようです。

② ヒラアジ類

改めて調べてみました。標準和名のなかに「ヒラアジ」を含むアジ科魚は何種か存在しますが、「ヒラアジ」という種・属はありません。ですので、コメントによく登場する「ヒラアジ類」という言葉は、なかなか取り扱いが難しいのですが、ここではそのまま使っていきたいと思います。

この「ヒラアジ類」とは、概ねギンガメアジ属の幼魚を指すようです。潮に乗った当歳魚は、本来の分布域を超えて北上し、海水温の低下とともに死滅する、「死滅回遊魚」として知られます。これらが姿を現す地域では当然に、成魚の姿を見ることができませんね。ギンガメアジ属の幼魚を見分けることはそう簡単ではないので、十把ひとからげで「ヒラアジ」と呼ばれていたのではないかと思います。スーパーなんかで「シマアジ」の名で売られているのを、たしかに私も目にしたことがあります。

③ 釣り人

下手くそですが、私も「釣り人」の一人だと自認しています。ですので、こんなことを言うのはおかしな感じもするのですが、地方名を集める立場からすると、「釣り人」というのはなかなか厄介な存在でもあります。

例えば「クロダイ」の呼び名について。そもそも「クロダイ(黒い鯛)」は東日本の呼び方で、西日本では茅渟(ちぬ)湾に由来するとされる「チヌ」、九州・沖縄ではそれが訛った「チン」という呼び方が定着していたと想像します。しかし、釣り雑誌などで「チヌ釣り」という言葉が多用された結果、これらが混在する結果となったというのは否定できないように思います。つまり、釣り人が魚の呼び名をかき混ぜてしまうことが時々起こっているようなのです。

ルアーフィッシングの普及とともに、「ヒラアジ類」は人気のターゲットとなっていきました。そして、パッと見には、「カイワリ」と「ヒラアジ類」は似ています。これが「メッキ」と呼ばれる対象が広がったことに強く関係しているのだと思います。

コメントしていただいた方々(Facebookにおける登録名そのまま、順不同)
佐藤厚さま、大澤風季さま、菅原 守雄さま、江川 正己さま、五十嵐 浩さま、山出 潤一郎さま、Eiichi Yamamotoさま、深田吉宜さま、船越 寛哲さま、末廣 孝一さま、中尾 史仁さま、和田 俊章さま、日高 秀一さま、野村 卓司さま、寺井祐二さま、Rei Kobayashiさま、嶋田 春幸さま、佐藤 豪軌さま、田中圭さま、濵中 省吾さま、Kengo Kitamotoさま、Shintaro Sekineさま、門家重治さま

投稿者 土岐耕司 

原文作成日 2024年3月26日

※このページの情報は、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』に寄せられたコメントを基にまとめたものです。

WEB魚図鑑 カイワリ他
https://zukan.com/fish/internal194

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